Research 2-1

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DNAトポイソメラーゼIIβによる神経特異的遺伝子の発現制御機構

DNAトポイソメラーゼ (トポ) IIβはDNAの高次構造を変換する酵素で,最終分裂後の2度と分裂しない神経細胞で発現が増加します.私たちはトポIIβが神経細胞の核内DNAの再配置というエピジェネティック制御によって,一群の神経特異的遺伝子の発現を誘導または抑制することを明らかにしてきました.トポIIβにより誘導または抑制される遺伝子群は数百kbを超える長大な遺伝子や,個々の遺伝子は短くてもゲノム上にクラスターとして存在し,長大なゲノム領域として共制御機構されているものがあります.
私たちは初代培養神経細胞で,トポIIβがゲノム上でCCCTC-binding factor (CTCF) , hnRNPU/SAF-A/SP120 (SP120) と共局在することを示しました.本研究室ではこれらの因子に着目し,神経細胞の終末分化過程における長大遺伝子及び,クラスターとして存在する遺伝子群の共制御機構を明らかにすることを目的としています.トポIIβ, CTCF, SP120は広範な組織に発現するにも関わらず,そのヘテロ接合変異は,自閉症,知的障害などの精神・神経疾患を生じます.これらの因子が関与する神経系での遺伝子発現制御機構の解明により,高次脳機能の発現機構とその破綻により生じる疾患の病態解明につなげたいと考えています.
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